REPORT

JIFFのスタジアムアクセシビリティにおける取り組み 〜発達障がい、自閉症、感覚過敏のある子どもたちのためのセンサリールーム観戦〜

イベント
2025.04.02

一般社団法人日本障がい者サッカー連盟(JIFF)は、4月2日の「世界自閉症啓発デー」にあわせて、東京都新宿区にある国立競技場で「世界自閉症啓発デーイベント」を開催し、イベントの取り組みの一つとして、エキシビションマッチ「JAPAN FOOTBALL LIVE 2025 デフサッカー男子日本代表 vs クリアソン新宿」にセンサリールーム(※1)を設置し、5人の子どもたちとご家族をご招待しました。

(※1)センサリールームとは
明るすぎない照度と、大きな音や声などの大音量を遮る遮音が施され、人混みや周囲の視線を避けた安心できる部屋で、防音ガラス越しにサッカー観戦や映画などを楽しめることを目的とした部屋。

 

今回は、東京藝術大学のご協力のもと、発達障がい、自閉症、感覚過敏のある子どもたちが安心して観戦ができるようセンサリールームを2部屋設置し、より楽しめるサッカー観戦環境の提供をおこないました。

 

日頃、通常の観客席で観戦することが難しい子どもたちが、センサリールームでボールや選手の行方に興奮しながら試合観戦を楽しんでいる姿が見られました。また、デフサッカーの工夫されているルールとして、フラッグを持った審判がいることに皆さん驚かれており、障がい者サッカーやデフサッカーについて深く知ってもらうことのできる機会にもなりました。

そして、センサリールームのほか「おちつく部屋」も設置し、気持ちを落ち着かせるためのスペースも設けました。

参加者の感想

・大変考慮されたお部屋で過ごすことができ、安心して、また、楽しく観戦することができました。

・子どもが、初めて最初から最後までサッカーの試合を観戦することができました!

・初めは場所見知りが発動してしまった息子ですが、徐々に慣れ最後は自宅で寛いでいるかのようにのびのびと過ごす事ができました。今まで親子ではハードルが高かったサッカー観戦でしたが本人も楽しかったと言っており成功体験に繋がったのでこれを機にまたいつかサッカー観戦に行けたら良いなと思っています。

東京藝術大学コメント

お家から電車や車で移動しスタジアムに着いて、初めての空間で過ごすこと。
それは、大人でも結構馴染むのに時間がかかると思います。
でも、もし、そこが迎え入れられている、という感覚を得られたり、楽しそう、と興味を惹かれる場所であったとしたら、
場に馴染む時間が短くなるかもしれません。

芸大のセンサリールームを作る際、当事者やそのご家族からのヒアリングをもとに、
観戦の仕方を選べることができる空間を目指しました。
そして、サッカーの楽しさ・可能性を伝えるため、視覚的にサッカーのモチーフを用いました。

利用するご家族がセンサリールームに到着すると、まず最初に「わぁっ」という嬉しそうな空気が生まれるのを感じます。
それからボールのモチーフを見たり、座ったり、色々な機能を試したりしていくうちに、空間に馴染んでいきます。
だんだんとそこに集まった人にとっての過ごし方や、そこにいる人にとっての試合の応援の仕方が生まれていきます。
新しい遊びが生まれることもあります。

通常は一部屋1家族で利用いただいていましたが、今回はグループで参加していただきました。
そのためいっそう「場」が生まれるのが早かったように感じています。
おそらく、信頼できるメンバーと一緒だから、安心・楽しそうという気持ちを短時間で共有し表現できたからではないでしょうか?
もう一つのお部屋を利用するご家族とも混ざり合いながら、試合観戦は進みました。
一つのお部屋は賑やかに・応援しながら、もう一つのお部屋は静かに・集中して。
それぞれの仕方で観戦できること。馴染んだ人とも初めて会う人とも、観戦している風景。
それはセンサリールームの機能だけでは生まれません。
利用する人の、楽しみたいという気持ち、相手を思いやる気持ちや信頼などから生まれる、本当に嬉しい光景でした。

 

 

JIFFはこのような誰もがサッカー観戦を楽しめる観戦環境の整備を通じて、これからも「サッカーを通じた共生社会づくり」に取り組んで参ります。

 

以上